自由コラム

近くの日本、遠くの日本

コロナ禍で以前のようには日本に行けなかったこの期間、「近くの日本」と「遠くの日本」を感じた。
「近くの日本」。元々デジタルの世界では日本への距離を感じる事は皆無だったが、都市郊外にあるドイツ系スーパーマーケットにまで「日本食コーナー」が出来ていたのには驚いた。お寿司に焼き鳥。焼きそばにお酒。なんと“PONZU(ポン酢)”まであった。日本に長期間帰れず、またロックダウンの中、我が家の「癒し」となった。また怪訝な顔で商品を手に取るドイツ人を横目に、なんだか誇らしく感じた。
「遠くの日本」。いくらデジタルが発達し、「近くの日本」に癒されても、人と直接会う欲求は満たされない。日本の年老いた親とは、なかなかスムースなビデオ通話ができない。昨冬誕生した甥っ子は抱く機会もないまま、「歩き始めたよ」の一報を聞き、大きな喜びと共に、どこか小さな寂しさを覚えた。「遠くの日本」で、日々は容赦なく過ぎていく。
再び日独を気軽に往来出来る日を、心から待ち望みたい。

編集委員 武井 裕次郎