「第五の季節」の到来
ドイツのなかでもカーニバル三大聖地の一つに数えられるデュッセルドルフ。そのハイライトはなんといっても「薔薇の月曜日」のパレード(Rosenmontagszug)です。しかし、実はその前日または前々日から、各地区で独自の行列が行われることをご存じですか。
日本人に馴染みの深いニーダーカッセル地区でも、パレードは日曜日と決まっています。そして、地域住民で埋め尽くされた沿道から聞こえてくるのは・・・おもちゃのチャチャチャ・・・懐かしい日本のメロディー。その正体は「ちんどんや」です。日独の有志がやっている楽団で、長年、ニーダーカッセルの行列の先頭を飾ってきました。その後には日本人学校児童の可愛らしい仮装姿が続きます。この地区ならではのカーニバル光景と言えるかもしれません。
というわけで、「ニーダーカッセルちんどんや」をご紹介します。
なぜ、ちんどんや?
結成は今から遡ること17年前。元々は親子三人でケルンの街角に立って演奏したのが始まりです。個人的にはなかなか気恥ずかしい体験でした。そのうち子供も学校に上り、音楽好きの同級生の父母を誘い、少しずつ仲間が増えていきました。そして、次第に駐在員のご家族も参加してくださるようになりました。なかには日本に帰国されてからも、わざわざ日本からカーニバルに「飛び」入り参加されるご家族もいます。
顔ぶれは日本人とドイツ人が半々で、ドイツのカーニバル曲の他に日本の童謡やアニメソングが主なレパートリーです。日本人のお子さんたちにも楽しんでほしいという願いから、本番では日独の曲を交互に演奏しています。
その名に反して白粉顔の和装ではなく、騎士団風の衣装で練り歩きます。では、なぜ「ちんどんや」なのかというと、誰でも気軽に参加できる音楽隊にしたかったからです。吹奏楽器ができなくても大丈夫。ピアニカだって参加できます。リコーダーを一生懸命吹く子供の姿も、かわいいものです。「ちんどんや」なのだから少しくらい音が外れたって、そこはご愛嬌。
GRENZENLOS!いよいよ、ニーダーカッセルでデビュー
ニーダーカッセルの行列に初参加したのは、2012年のこと。初の日独音楽隊ということで、それなりにメディアの注目を集めました。地方紙の文化面を飾ったり、ラジオで取り上げられたりしました。
最終地点に設けられた舞台では、カーニバルの王子と王女(Prinzenpaar)が待ち受けています。そこで我が楽団が全力で演奏したのが『Denn wenn et Trömmelsche jeiht』。実は、この曲は知る人ぞ知るケルンの代表的なカーニバル曲です。苦虫を噛み潰したような王子の顔を今でもよく覚えています。ラジオのレポーターは、これぞ「ボーダーレス」と揶揄していました。つまり、日本とドイツ、そしてデュッセルドルフとケルンの国境を超えたバンドというわけです。
南ドイツに遠征も
団員はラインラント人ばかりというわけではなく、なかには隠れシュヴァーベン人(ドイツ南西部出身者)もいます。そんなご縁もあって、黒い森地方のアレマン・ファスネット(Alemannische Fastnacht)に遠征したこともあります。当地の陽気なカーニバルとは異なり、ナマハゲのような異様な仮面姿の行列は迫力があります。そのなかで「ちんどんや」はライン地方風の衣装を身に付けて、早朝の目覚まし行列(Wecken)に参加しました。ギルドと呼ばれる道化組合の方々が面白がって、特別に舞台裏に案内してくれました。団員にとってよい思い出となっています。
その他の活動、団員募集
ニーダーカッセルのほかにも、近隣の地区や都市(ベンラート、ケルン、ヒルデン、ボン近郊)の行列でゲスト参加しています。その他の活動としては、東日本震災復興支援チャリティーコンサートへの参加、補習校幼稚部での演奏、新年会イベント、a performancelife e.V.(癌患者支援団体)のための友情出演などが挙げられます。また、地元の小学校や幼稚園のために聖マルティン祭行列の伴奏を毎年、ボランティアで引き受けています。
これまでに参加されていた駐在員のご家族は、残念ながら皆さん本帰国されてしまいました。コロナ禍で行列が中止されていた二年間は、新規メンバーを募ることもできずに今に至っています。というわけで、団員を大募集!練習は年間4回程度で、大抵はお茶会をかねた肩の凝らない集まりです。
この会報がお手元に届く頃は、ちょうど行列を終えて一息ついているはず。久しぶりの本番で気合いの入った「ちんどんや」の演奏はいかがでしたか。来シーズンも紅白ユニフォームの一団を見かけたら、ご声援を!いやいや来年まで待てないという方は、以下までご連絡ください。次は一緒に行進しているかもしれませんよ。
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